東京に遊びに出かけたある日、ふと思い立って以前から気になっていたメンズヘッドスパを体験してみることにした。スマホで検索し、見つけたのは上野の隠れ家的な店舗。ビルの外観はやや年季が入っていたが、その分、秘密めいた期待感が高まる。
予約はLINEで簡単に済ませた。到着すると、出迎えてくれたセラピストは、ややクールな印象の大人の女性。初対面の緊張感もあってか、その素っ気なさが妙に心をくすぐる。
カウンセリングが終わると、シャワーを浴びるよう促される。バスローブに着替え、ふわりとした生地の感触に包まれながらソファに座って待機。次第に部屋の明かりが落とされ、優しいアロマの香りが漂い始めた。
施術が始まると、足元からふくらはぎ、太ももと、じっくりと指圧でほぐされていく。程よい圧が心地よく、気づけば自然と呼吸が深くなっていた。
次第に胸元にトリートメントオイルが滑らかに塗られ、バスローブの隙間から肌に直接触れる温かい手のひら。その柔らかな感触と甘い香りが、次第に心をとろけさせていく。
セラピストは無言で、しかし確実にこちらの様子をうかがいながら、絶妙な距離感で施術を進めていく。時折、柔らかな胸がふわりと顔に触れる。目を閉じていても、その距離感ははっきりと伝わってきた。
頭部マッサージに移ると、指先がしっかりと頭皮を捉え、日頃の疲れが溶けていくような感覚に包まれる。そのままリクライニングシートが倒され、自然と視界は薄暗い天井だけに。
「リラックスしてくださいね。」という囁くような声とともに、今度は腹部から太ももへとトリートメントが塗られる。わずかに呼吸が乱れる中、ふいに太ももの付け根付近で手が止まり、何気ないようにスッと滑るその指先に、思わず身体が反応する。
ただ、それ以上の踏み込みはなく、あくまで“施術”という体裁は崩さない。その絶妙なラインに、逆に気持ちは高まっていくばかりだった。
気が付けば90分が経過し、セラピストは何事もなかったかのように「お疲れさまでした」と優しく声をかけてくれる。最後に冷たいお茶を差し出され、その優しい笑顔にすべてが癒された気がした。
部屋を出た後の外の空気は少しひんやりとしていたが、心はすっかり温かく満たされていた。また来てみよう、そんな気持ちが自然と湧いてきた。
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